「おさわがせ びっくりフィリップ」絵本ラフ
カーン、カーン。夜をつげる、鐘の音がひびきわたります。おばけの森に夜がきたのです。
びっくりフィリップ
「ヤッホゥ! さぁ、みんな、おきろ! おばけの時間だぞぉ!」
とびだしてきたのは、びっくりフィリップ。いつでもどこでも、だれかをおどかしてばかりいる、いたずらゆうれいです。墓場のゆうれいたちを、ひきつれて、さっそく、一仕事しようというつもりです。
びっくりフィリップ
「さぁて、今日は、どうやってびっくりさせちゃおうかなぁ? シッシッシッシ!」
すると、フィリップは、そぉっと、大きな木をすりぬけました。そして・・・
「バァ!」
「ギャァァァ!」
とつぜん、木の中からフィリップがでてきたので、オオカミおとこはおどろいて、目をまわしてしまいました。
すると こんどはフィリップ、岩の中をすりぬけて・・・
「バァ!」
「ほげぇぇぇ!」
ミイラおとこも、ハサミおとこも、びっくり、びっくり。あんまりおどろいたので、こしをぬかしてしまいました。
そして、こんどはフィリップ、お城の鏡の中をすりぬけると・・・
「バァ!」
「うわぁ!」
これには、さすがのドラキュラ・イワンも、たまらず、びっくり。持っていたトマトジュースを落としてしまいました。
びっくりフィリップ
「プププゥ。おどろいてやんの。」
ドラキュラ・イワン
「コラァ! フィリップ! また、おまえかぁ! これで、こわれたグラス、九十九コめだぞ!」
びっくりフィリップ
「あらま。それはおめでとう。次で百コじゃん。」
ドラキュラ・イワン
「うぬぬ、なんだと! まてぇ!」
おこったイワンは、フィリップを追いかけました。ところが、フィリップは壁をすりぬけて、あっというまに、いなくなってしまいました。
ドラキュラ・イワン
「もう、おこった! きょうという、きょうこそ、ぜったい、ゆるさないぞ!」
かんかんにおこったイワンは、すぐに、おばけの森のみんなをあつめました。そして、誇りたかきドラキュラの名にかけて、あの、いたずらゆうれいを、ぎったぎたの、ばったばたの、ぼっこぼこに、こらしめてやるのだと、宣言したのです。すると、
ハサミのゾル・ゾッカ
「賛成! 賛成だズラ! あんなわるいやつなんか、やっつけちゃえばいいんだズラ!」
ミイラのトトメス
「そうですぞぉ! もう、わるさをできないように、どこかに閉じこめてしまいましょう!」
さてさて、おだやかではありません。なにしろ、みんなでフィリップを、やっつけてしまおうというのですから。
するとそこへ、森で一番のまほう使い、まじょっこサーシャが、なだめにはいりました。
まじょっこサーシャ
「ちょっとまって。いくらなんでも、やっつけるなんてだめよ。かわいそう。」
ドラキュラ・イワン
「ふんだ。かわいそうなものか。いままでだって、さんざん注意してきたんだ。」
まじょっこサーシャ
「それは、そうかもしれないけど・・・」
そのとき、カーン、カーンと、鐘の音がきこえてきました。おやつの時間です。
ドラキュラ・イワン
「さあ、みんな。はらごしらえをしながら、作戦会議といこう。」
まじょっこサーシャ
「・・・ねぇ、ちょっとまって。わたし、いいことおもいついた、かもしれない。おねがい。ここは、わたしにまかせて。」
さてさて、そこでイワンたちは、ともかくも、フィリップをおびきだすため、びっくりパーティーを開くことにしました。
「バァ!」
「ベロベローン!」
「ウキャキャ!」
おばけたちは、おどかしあいっこで、おおもりあがり。もちろん、こんな様子を、フィリップが、みのがすわけがありません。
びっくりフィリップ
「プププゥ! こんな、たのしそうなことしちゃって。こりゃ、まけてられないぞ。みんな、ううんと、ううんと、びっくりさせてやる!」
そこでフィリップは、いっちばん目立ちそうな、 広場のまんなかにもぐりこみました。そして・・・
「バァ!」と、いきおいよく、とびだしました。ところが、
ドラキュラ・イワン
「あ! 出たな! みんな、いくぞぉ!」
さあ、フィリップをまちかまえていた、みんなです。みんな、おどろくどころか、やっきになって、フィリップにとびかかりました。
びっくりフィリップ
「ちょ、ちょっと、どういうことぉぉぉ!」
おどろいたのはフィリップです。さあ、もう、しっちゃかめっちゃか。にげまわるフィリップを追いかけて、どってんばったん、おおさわぎ。
まじょっこサーシャ
「もう、みんなぁ、まってったらぁ! わたしにまかせてって、いったじゃない! まったく、みんな、勝手なんだから。」
サーシャは、まほうの本を開きました。
まじょっこサーシャ
「メケルヤ、メケルヤ、ルーペンドットチーパッパ! おねがい、すずのせいれいさん、力をかして!」
すると、まほうの本の中から、かわいらしい、すずのせいれいさんが出てきました。そして、フィリップのくびに、大きなすずを、まきつけてしまったのです。
びっくりフィリップ
「うげぇ!なんだ、これ!? これじゃぁまるで、ねこじゃないか! こんな、うるさい、すずなんかつけてたら、だれもびっくりさせられないよう! うぇーん!」
すると、サーシャがいいました。
まじょっこサーシャ
「いいえ、そんなことはないわ。いい? すずの音が聞こえて、フィリップがいるのがわかったら、みんな、おどろくための準備ができるの。」
びっくりフィリップ
「え? おどろくための準備だって?」
まじょっこサーシャ
「そう。そしたら、今よりもっと、みんなのおどろいた、いい顔がみれるんだから。」
びっくりフィリップ
「本当に?」
まじょっこサーシャ
「ええ、本当ですとも。ねぇ、みんな。」
さてさて、それからというもの、チリン、チリーンと、すずの音が聞こえると、
「お、フィリップがきたみたいだぞ。それじゃ、せぇの・・・」
みんながみがまえた、つぎのしゅんかん・・・
「バアァァァ!」
「キャァァァァァァ!」
みんな、すっかり、いい顔でおどろくようになりましたとさ。
(おしまい)
【おまけページ】